海事に関する国際条約と船舶安全法
1 IMO(国際海事機関の)概要(国土交通省ホームページより転載)
1.1 はじめに
国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)は、海上の安全、船舶からの海洋汚染防止等、海事分野の諸問題についての政府間の協力を推進するために1958年に設立された国連の専門機関です。本部は英国(ロンドン)に所在し、2018年6月現在で174カ国が加盟国、香港等の3の地域が準加盟国となっています。
船舶が国際的に活動することから、海事分野の取組は必然的に国際的な取組となるため、海事分野のルールは各国が連携・協力して全世界的なものとして定められてきました。既に19世紀後半には、主要な海運国が中心となって、各種の技術的事項や灯台業務、海難防止・海難救助等の海上安全の確保を目的とする国際条約等の取決めがなされています。
例えば、1912年4月に発生し世界に大きな衝撃を与えたタイタニック号沈没事故は、船舶の安全に関する措置の国際的な取決め策定へ向けた大きなきっかけとなり、1914年1月に「1914年海上人命安全条約」(1914SOLAS条約)が採択されています(第一次世界大戦の影響により未発効)。
現在、このようなルール作りはIMOで行われており、世界の主要な海運国・造船国である我が国も、国際機関の場で積極的に活動を行い、世界の海事分野のルール作りに積極的に貢献しています。
1.2 歴史
第二次世界大戦後、国際連合は、船舶輸送の技術面の検討のため、常設の海事専門機関の設置の必要性を指摘した運輸通信委員会の報告に基づき、1948年3月、国際連合海事会議をジュネーブで開催し、政府間海事協議機関(Intergovernmental Maritime Consultative Organization: IMCO)の設立及びその活動に関するIMCO条約を採択しました。
当時我が国は、戦後の対日平和条約の締結がなされていなかったため、この会議には参加できませんでしたが、1958年3月、我が国が同条約の受託書を寄託することでその発効要件が満たされ、IMCOの設立が果たされました。
その後、1975年11月には、機関の活動内容の拡大と加盟国の増加に伴う名称変更等の必要性に鑑み、IMCO条約の改正が採択され、1982年5月の改正条約発効により、IMCOはIMOに改称され、現在に至っています。
1.3 組織
IMOは、総会、理事会、海事関連各分野における5つの委員会、その下部組織である7つの小委員会及び事務局で構成されています。
(1) 総会
全加盟国及び地域で構成されるIMOの最高意思決定機関であり、通常2年に1回、2週間程度開催されます。総会では、機関の事業計画及び予算の決定、補助機関の設置、理事国の選挙、理事会の報告の審議等が行われます。
(2) 理事会
総会で決定された理事国(40カ国、任期2年)で構成され、総会の下でIMOの業務を監督するIMOの執行機関としての役割を有しています。通常年2回開催されるほか、総会の開催年には、総会直前に臨時理事会が開催され、総会最終日に通常の理事会が開催されます。
理事国は、カテゴリーA(国際海運業務の提供に最大の利害関係を有する国:主要海運国)、カテゴリーB(国際海上貿易に最大の利害関係を有する国:主要荷主国)、カテゴリーC(その他の海上運送又は航海に特別の利害関係を有する国:その他海事関係国)に分類され、我が国はIMO設立以来の理事国として、IMOの活動に積極的に参画しています。
(3) IMOへの我が国の貢献
我が国は、IMOの設立以来の理事国として、その活動に積極的に参画してきました。また、主要海運・造船国としての知見を活かして、各種条約を始めとしたルール策定の審議にも積極的に参加しています。例えば、2011年7月に国際海運として初めてとなる温室効果ガス削減対策として採択された、MARPOL条約附属書VIの改正に際しては、我が国が主導的な役割を果たしました。
なお、IMOの運営は大部分を各加盟国からの分担金(分担率は各国の保有船腹量等によって算出)で賄われており、我が国は支払額において第12位を占めております(2018年)。
また、2017年7月6日、第71回海洋環境保護委員会(MEPC71)で実施された2018年のMEPC議長選挙において我が国の斎藤英明氏(現海事局船舶産業課長)が選出されました。日本人がIMOの委員会の議長ポストに就くのは、初めてのこととなります。
(4) 事務局長
2017年7月6日、国際海事機関(IMO)の第71回海洋環境保護委員会(MEPC71)で実施された2018年のMEPC議長選挙において我が国の斎藤英明氏(現海事局船舶産業課長)が選出されました。日本人がIMOの委員会の議長ポストに就くのは、初めてのこととなります。
1. 2017年7月6日(木)(現地時間)、IMO本部(ロンドン)にて開催中のIMO MEPC71において、2018年のMEPC議長選挙が行われ、我が国の斎藤英明 MEPC副議長(現海事局船舶産業課長)が選出されました(任期1年、最大4回まで再選可)。日本人がIMOの委員会の議長ポストに就くのは、初めてです。また、アジアからMEPC議長に就くのも初めてです。
2. IMOは、海上の安全、海洋環境の保護等の海事問題を取り扱うため、1958年に設立された国連の専門機関です。その中で、MEPCは、温室効果ガス(GHG)の排出削減やバラスト水管理等の環境規制を審議しており、海事産業に与える影響が非常に大きい、注目度が高い委員会です。
3. 我が国はこれまで、船舶からのGHG排出削減対策等の、MEPCにおける環境規制に係る国際基準の策定を主導してまいりました。引き続き、海洋環境の保全と我が国造船・海運業界の国際競争力の強化に向け、MEPCでの取組を主導してまいります。